令和拾遺物語

実話を元にした現代の拾遺物語です

変態コンサルタント

有名コンサルティング会社に勤める山村はK大學を卒業し、神主の友人が多数いる。

 

昨今では神社経営も楽ではなく、GHQによって解体された日本の神道文化は廃れる一方であり、戦前の国家公務員としての地位も失墜し、これからの神社は時代に合わせた経営が必要になるのだとか。

 

神主の草田は経営のプロである山村にアドバイスを求めた。

 

「うちの神社もそろそろ危ない。ほかの神社は独自で祭りなどを作ってうまく地域と協力し合ったりしているが、いかんせんこの辺りは田舎なもんで過疎っぷりも尋常ではない。何かいい方法はないもんかねぇ山ちゃん?」

 

山村は正直に答えた。

 

「俺の専門は医療関係だから正直神社の経営どうこうは門外漢というか、全く思いつかない。うん、見当もつきゃせんよ」

 

 

 

山村の営業成績はトップクラスだったが会社方針の利潤追求についていけず、自暴自棄になっていたというか、社会のあり方にも納得がいかず、実際もう死のうかと考えていた。彼はアルコール中毒気味になり、電車通勤も手伝って営業中にも酒をあおり、勤務中にSMクラブへ通うなど、もうほとんど人生がどうでも良くなっていた。

 

 

 

ある日草田は本格的に山村へ相談しようと思い電話をかけた。昼間から酒を飲んでいた山村は電話を受け、「やーやースカイウォーカー君、背中をシャキッと伸ばしなさい、んで、オビワンセノービ」などと言いながらお願いを了承し、草田の神社へ赴くと、早速ジャックダニエル片手に話を始めた。

 

 

 

「ぜぇんぶ僕がなんとかするからぁぁ」

 

 

 

 

その後経営改革を一任され、早速実行し始めた。

 

彼はまず、知り合いのデザイナーに頼んで巫女さんの衣装を作ってもらった。胸元が開け、大腿が大胆に露出するパリコレ風の巫女装束である。さらにベリーダンス教室へ通わせて踊りをマスターさせ、賽銭箱の後ろで巫女さんが踊り狂う八百万ナイトなるイベントを創設。変態パリピの歯抜けおっさん達が賽銭を投げまくる熱い夜を演出するぴょん。

 

さらに山村は鏡内にビデオカメラを設置、YouTubeにてライブ放送しスパチャを催促。投げ銭が入るとAIの巫女さんが「ナイスパ!」と返してくれるシステムを構築。

 

それから友人のプログラマーに頼んで神社アプリを開発。多様なプレイを楽しんでもらいたいとの願いから、シューティング、育成、ロープレ、レースなどの要素を搭載。

 

インベーダーゲーム形式で賽銭箱が縦横無尽に動き回り、そこに向かってスマホをタップして賽銭を投げ入れ、命中すると実際に課金されるという神秘のプログラムを開発した。

 

ロープレではさらわれた巫女さんを救うために神主が旅に出発。悪霊が出現すると画面に、

 

「祝詞を読め!」

 

と出るので指示に従って祝詞を音声認識させ、間違えずに読誦できれば悪霊退治ができる。

 

シミュレーションでは自分で神社を作ることができる。しかし注連縄を作成するのに大麻草が必要なので、まずは大麻草を手に入れるために役所を説得するところからゲームが始まる。選択画面には、

「土下座」 「キャバクラで接待」     「賄賂」  「美人局」

 

などが現れ、うまくアレすることでよりよい神社を作ることがきる。

 

鳥居を作る際は注意が必要だ。村を回って建築士を探し出し、気難しく絡みづらい一級建築士のげんさんに商談を持ちかけると、ストレスでライフと所持金がだいぶ減ってしまうが立派なものを作ってくれ、ノリの軽い若手2級建築士のてっちゃんにお願いすると間違えて鳥小屋を作ってしまったりする。

 

しかし要素は満載。

 

そこで育てた鳩をレースに参加させることによって大金持ちになったり、めっちゃ速い鳩を実際に800円くらいで課金させランキング上位を狙わせるなど、飽きさせないための工夫を散りばめる。そのうちに神社より鳩レースの方が儲かるじゃん!と気づいたユーザーはレースに夢中になるが、2級建築士のてっちゃんの仕事が増えすぎてブラック化、嫌になって暴走族に入ってしまい鳥小屋を破壊されるなど予想外の展開もちらほら。

 

それらを知った草田はブチキレ、契約解除を迫った。

 

 

「じゃあお守り屋台を作ってパチンコとか競馬場の前で売るってのはどう??」

 

 

こうして山村は友人を一人失った。