令和拾遺物語

実話を元にした現代の拾遺物語です

三階から飛び降りた男

とある有名体育大学に入学した男の話。

 

その大学は非常に上下関係が厳しく、その厳しさは体育会系大学の中でもトップクラスらしい。その男は寮に入り、初めての団体生活を開始したが、数ヶ月もすると言動が少しおかしくなり始めた。目が座り、先輩への態度が横柄になるなど、周囲もあいつなんかやばくない?と心配していたそう。

 

ある日その男は夜中にフラフラと起き出し、小さなベランダへ出た。夜中にベランダに出る者など皆無だったので、おかしいと思った先輩は眠い目をこすり窓の外を見た。するとその男は手すりの上に立ち、今にも飛び降りようとしていた。驚いた先輩はオイッ!!と怒鳴り、部屋で寝ていたもう二人も飛び起き、何事かと周囲を見回しベランダに気づくと、オォワッ!!っと変な声が出た。部屋の先輩達はパニック状態となり、飛び降りを止めようと慎重にベランダへ近づいたが時すでに遅し。彼はひょいっと飛び降りてしまった。

 

その後、飛び降りを目撃したと名乗り出る者があった。話を聞くと、飛び降りた後になんなく着地し、走ってどこかへ行ってしまったそうだ。後日談を聞くと、そのまま日本海側にある故郷までランニングで帰郷し、その年の国体に無事出場したそうである。