ダーツ
牧田という若い消防士がいる。彼は非常に心優しく、正義感溢れる頼もしい男である。
ある日牧田は高校時代の部活の先輩、高田と夕飯を食べていた。
「先輩はいいですよね、お客さんはみんな笑顔でお店に来るでしょう。僕は悲しんでいる人たちの現場に行かなきゃならないんです。それが時々きついんです」
パティシエになった高田はこう返答した。
「いや、お前自分で救急車とか消防車呼んだことある?もうだめだ、私は死ぬんだって不安で不安で仕方なくて、まさに絶望の真っ只中にある時、希望の光が大きな音を立てて自分を助けに来てくれる、あの普段は他人事のサイレンが自分に向けて全力で飛んできてくれる時、どれだけ心強く、ありがたく、頼りがいのあることか、当事者になってみたら分かるよ。」
高田は続ける。
「俺たちの心の中には、何かが起きても消防士さんが助けに来てくれるって安心感がどこかにあって、だから甘えて危険な行為をしてしまう時もあるんだろうけどさ。例えばうちの実家の近くにいい感じの崖があって、アマチュアクライマーなんかが良く集まってたんだけど、落っこちてヘリコプターが負傷者を運んでいくなんて日常風景で。けどあまりにも転落事故が多すぎて、コストがかかりすぎるからこれ以上ドクヘリを派遣できないって県議会で決められちまったんだ。そしたらどうなったと思う?その崖を登るクライマーは一人もいなくなったよ」
牧田は「へぇー」と興味深そうに聞いている。
「お前のおかげで俺たちは日々安心して生活できるんだ。だからいつもありがとな」
高田がそう言うと牧田はジーンと来てしまい少し泣いた。
二人がそんな話をしてからしばらくして、牧田は救急救命士の国家試験に合格したのだと高田へ報告した。
「これから先輩に何かあったら僕が救急車で助けに行きますからね」と牧田は言った。
そのフリに答えるかのようにある日高田は119へダイヤルし、牧田が駆けつけることとなった。
なんでも近くの崖からバンジージャンプしてチンポを負傷したらしく、勃起したチンポがダウジングロッドのように曲がっていたらしい。
高田は地面にテンガを置いて勃起したチンポをぶち込もうと試み、自前の強力な命綱をぶっとい木に巻き付け、スカイダイビングで両手両足を広げて空中滑降する態勢で飛び降りたらしい。