令和拾遺物語

実話を元にした現代の拾遺物語です

転職

ゴルフ場へ転職した館野という真面目な男がいた。仕事を覚えるのが非常に早く、またコミュニケーション能力にも長け、現場での信頼もすぐに勝ち取った。中途で入ってきた彼は歓迎され、いい子が入ってきてくれたと支配人も嬉しそうだった。

 

しかし彼はただの変態だった。

 

館野は幼少期、デパートに突っ立っているマネキンのパンティーをズリ下ろし、勃起してしまった。それから人形を見ると勃起してしまうようになり、下手をすると畑に立っているかかしを見た時でさえ、ちんぽがツンッ反応するようになってしまった。彼は対策として、かかしの下半身に電動バイブを仕込み、そこを通る度に遠隔でうねうねさせるなどして勃起しないように対策をしたが、畑のじーさんがとびっこに気付いてぶちキレ、処分されてしまった。

 

そんなこんなで館野は社会人になると、ダッチワイフやラブドール収集に躍起になった。現実の女性にはあまり魅力を感じず、相変わらず人形に夢中になっていた。しかし根が真面目なので、このままではアレだよなぁと思い出会い系サイトに登録してみたり、相席居酒屋に行ってみたり、ある程度の努力はしていた。

 

そんなある日、先輩にソープへ誘われた。いい機会だからと連れて行ってもらい、初のローションプレイを経験すると、3秒でイってしまった。それから彼は現実に目覚め、ソープやヘルスに夢中になったが、10秒も経たずにイってしまう。一回160000円である。決して安くはない。いや、ソープの中では安いにせよ、16000円が10秒で吹っ飛んでしまうのはサラリーマンには痛手である。これでは家計が持たない。館野はなんとかならんものか、何かいい方法はないものかと模索していた。

 

ある日ゴルフ場の朝の会議で、支配人は「最近電圧計がおかしいからあまり近づかないように」と作業員へ通達した。ゴルフコースには野生動物が多々出現し、猪や鹿にグリーンをめちゃくちゃにされた、なんてことが結構起きる。グリーンにはミミズがたくさんいるので、それを捕食するために掘り起こされてしまうのだ。それで大抵のゴルフコースには電気柵が張り巡らされ、野生動物の侵入を阻止している。しかしやつらの跳躍力は人間の想像を遥かに超え、この高さを飛び越えたんですか?っていうレベルのジャンプをする。それで時々電気柵に鹿が引っかかってボロボロになり、電圧計がおかしくなる。

 

「それからもう一つ」と支配人が付け足した。

 

なんでもボール泥棒が出るらしく、夜な夜なコースへと侵入し、ボールを盗んでいく輩が出没するらしい。ロストボールはそれなりに高値で取引されるので、盗むやつが後を絶たない。もし怪しいやつを見たらすぐに知らせてほしいとのことだった。

 

 

 

しばらくすると、「泥棒が誰か分かったかも」、と良からぬ噂が流れた。その噂は支配人の耳にもすぐ届いた。なにやら仕事が終わった後に、館野がコース内に夜な夜な侵入していくの見たと言う社員が数人現れたのだ。しかし真面目な彼が盗みなどするはずがない、とみんな思った。それくらい高い信頼を館野は勝ち得ていたのだ。

 

数日後、グリーンキーパーと支配人は張り込みをすることにし、館野の動向を探っていた。「まさかね」、と思いながら仕事終わりに二人で見張っていると、確かに館野が事務所の裏手、14番コースの山林の中へ消えていくのがはっきりと見えた。二人は「まじかよお」とかなり落胆した。信じていたのに。「はあー」と二人でため息を漏らした。

発見してしまった以上責任者として見逃すわけにはいかない。そもそもボール泥棒は立派な犯罪。二人はもう辞めてもらうしかないと思っていた。

バレないように後をつけ、少し開けた場所へ着き、息を潜めて館野を見ていると、何か叫び声のようなものが聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアッ!!」    「ハアアアアニョップ!!」     「ペーレストロイカ!!」

「ターマちゃンゥ!!!」     「デォッパリ!!」    「アイッヒヒヒイイイイ!!」

 

 

 

 

 

そこそこ大きな声だった。近づいてよく見ていると、館野がチンポを電気柵に押し当てて、「オホホオオ!!!!!」などと叫んでいるようだった。

 

二人は館野に近づき、「何してるの?」と声をかけると、「ヒイイイイ!!!」と腰を抜かしてすっころんだ。

 

二人は館野を問い詰めた。

 

なんでも前の職場で先輩にゴルフに誘われ、派手にOBをかまして林に入った時、電気柵に触れてしまい心臓が止まるかと思った。しかしその時ふと、「これってチンポ鍛えられるんじゃないの?」と閃いた。早漏を治す方法を模索していたので、これしかないと思った。しかし先輩が待っているのでチンポを鍛えている時間はない。もう転職するしかないと思い、ここへ応募したと館野は白状した。

 

支配人は、民家も近いので大きな声を出さないこと、電圧を勝手にいじらないことを条件に館野を許した。一生懸命やってくれているからと、日ごろの行いが功を奏した。