令和拾遺物語

実話を元にした現代の拾遺物語です

プライド

日本の西の方に某スポーツ強豪校があり、そこに地元で有名な名物監督がいた。

その監督は小さな団地に住んでいたが、全国から合宿で集まってくる選手達に、宿泊費が少しでも浮くようにと部屋に泊めてあげたりしていた。

優しくて、心の広い先生であると有名だった。

 

次第にその団地には有名大学のアスリートも集まってくるようになり、ある大学生アスリートが宿泊させてもらうと、「その部屋にはあのオリンピック選手も寝泊まりしていたんだよ。だから君もオリンピックに行けるといいね」と言って微笑んだ。

 

さらにこの名物監督、サッカーゲームのウイニングイレブンが得意らしく、本人曰く「一度も負けたことがない」のだそうで、新しく選手が来ると、親睦を深めるためにまずウイイレを一緒にやって距離感を縮めていた。

 

ある日、某大学の選手2名がその団地に泊めさせてもらうことになった。

 

監督がプレステの電源を入れると、2人のうち片方の大学生が、

「いやーウイイレってかゲーム自体そんなやったことないんすよねぇ」と言ってあんまりやる気なさそうな感じを出すと、監督は「それならハンデとして君が僕のチームを選んでいいよ」と言い、「じゃあ日本で」と指定した。

ちなみにこの大学生はそもそもウイイレをやったこともなければサッカーもよく知らないので、なんだかよく分からないけど母国だからって感じで日本を選択した。当の大学生本人は画面でステータスを確認し、一番強そうなアルゼンチンを選択した。監督は、「おいおい、お手柔らかに頼むよ」と言って笑っていた。

 

試合が始まると大学生はそこそこいい動きを見せ、初めてにしてはかなりセンスのあるプレイをしていた。体育会系の選手は格闘ゲームなどでもセンスを見せることが多く、スポーツ系のゲームは感覚的にできてしまうのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、12-0で大学生が圧勝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボコボコにされた監督のメンツは丸潰れとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌年からその圧勝した選手の出身大学に所属する選手達は宿泊拒否になったと聞いた。